「投資信託を始めたいけど、毎月どのくらい積み立てればいい?」「『ドルコスト平均法』って難しそう…」投資相談をしていて、最も多く聞かれる質問です。実は、この方法は決して難しくありません。むしろ、初心者こそ実践すべき、最も効果的な投資手法なのです。
ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法は、「毎月一定金額を、同じファンドに投資し続ける」という、シンプルな手法です。
具体例
- 毎月5万円を、S&P500インデックスファンドに投資
- これを10年間、120回(月)繰り返す
- 相場が上下しても、毎月5万円は変わらない
その結果、自動的に「安い時は多く買い、高い時は少なく買う」ことになります。
月別購入のメカニズム
あるインデックスファンドに毎月5万円を12ヶ月間投資した場合のシミュレーションを見てみましょう。
左のグラフが示すこと
- 青いバー: 毎月の基準価額(相場の動き)
- 赤い折れ線: その月の購入口数
重要なポイント
相場が高い月(11月:11,000円)では、購入口数が4.5口に減少します。 相場が安い月(5月:8,500円)では、購入口数が5.9口に増加します。
具体的な結果
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 投資額 | ¥600,000 |
| 購入口数 | 52.4口 |
| 平均購入単価 | 約¥11,450 |
右のグラフは、一括投資(最初に100万円投資)との長期成長の差を示しています。初期段階では一括投資が有利ですが、相場変動時はドルコスト平均法がリスクを抑えます。
具体的な12ヶ月間のシミュレーション
実際の数字で見てみましょう。
| 月 | 基準価額 | 購入額 | 購入口数 | 累積投資額 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年6月 | ¥10,000 | ¥50,000 | 5.0口 | ¥50,000 |
| 2024年7月 | ¥11,000 | ¥50,000 | 4.5口 | ¥100,000 |
| 2024年8月 | ¥9,000 | ¥50,000 | 5.6口 | ¥150,000 |
| 2024年9月 | ¥12,000 | ¥50,000 | 4.2口 | ¥200,000 |
| 2024年10月 | ¥8,500 | ¥50,000 | 5.9口 | ¥250,000 |
| 2024年11月 | ¥11,500 | ¥50,000 | 4.3口 | ¥300,000 |
| 2024年12月 | ¥10,500 | ¥50,000 | 4.8口 | ¥350,000 |
| 2025年1月 | ¥13,000 | ¥50,000 | 3.8口 | ¥400,000 |
| 2025年2月 | ¥9,500 | ¥50,000 | 5.3口 | ¥450,000 |
| 2025年3月 | ¥10,800 | ¥50,000 | 4.6口 | ¥500,000 |
| 2025年4月 | ¥11,200 | ¥50,000 | 4.5口 | ¥550,000 |
| 2025年5月 | ¥10,200 | ¥50,000 | 4.9口 | ¥600,000 |
| 合計 | – | – | 52.4口 | ¥600,000 |
驚くべき結果:
投資額:¥600,000 ÷ 購入口数:52.4口 = 平均購入単価:約¥11,450
仮に相場が高値で推移していたら、購入口数はもっと少なくなります。価格が安い月に多く買うことで、自動的に「平均購入単価が下がる」効果が生まれるのです。
相場変動時の購入パターン
相場が上下する中で、ドルコスト平均法が自動的にどのように購入を調整するかを考えてみましょう。
グラフが示すこと
- 高値時: 購入口数が減少する
- 安値時: 購入口数が増加する
この「自動調整」により、一括投資では避けられない「高値掴みによる損失」が回避できるのです。
ドルコスト平均法のメリット
メリット1:平均購入単価を抑えられる
相場が変動する環境では、同じ金額で買い続けることで、自動的に平均購入単価が下がります。
実例:
「2015年から月3万円、10年間つみたてNISAで積立。当初は『安定した運用』と思っていただけですが、2020年のコロナショック時に『安い時に多く買える』メリットを実感した」という投資家が多くいます。
メリット2:「高値掴み」を防げる
一括投資の最大のリスクは「高値掴み」です。
例:2024年1月と比較
- 一括投資:100万円を基準価額10,000円で購入 = 100口 → その後、基準価額が8,000円に下落したら、資産は80万円に…
- 積立投資:毎月5万円を購入 → 基準価額8,000円の時は6.25口が購入でき、安く買える
メリット3:相場を予測する必要がない
「相場が下がるまで待とう」と思い続けても、購入のチャンスを逃してしまいます。ドルコスト平均法なら、相場予測の迷いは不要です。毎月同じ金額を買い続けるだけで、自動的に最適なタイミングが実現されます。
メリット4:少額から始められる
- 月1万円からスタート可能(証券会社による)
- 10年間で総額120万円
- 月3万円なら、10年で360万円
実例: 月3万円の積立を10年続けた投資家:「気がついたら400万円を超えていた。毎月3万円なら家計に負担がなかった」
メリット5:感情に振り回されない
相場が急下落すると、多くの投資家は「やめたい」と思います。しかし、ドルコスト平均法では「相場下落時=安く買えるチャンス」という心理的転換が起きるため、継続しやすいのです。
10年間の複利効果
年5%のリターンを想定した場合の10年間の積立効果を見てみましょう。
重要なポイント
- 月3万円:10年で約560万円
- 月5万円:10年で約930万円
- 月10万円:10年で約1,860万円
この差の秘密は「複利」です。最初の5年と後半の5年では、利益の出方が大きく異なります。
失敗パターンと対策
失敗1:「高い月は買わない」と途中で中止
「基準価額が12,000円に上がったから、今月は買わない」という判断は、ドルコスト平均法の本質を失います。継続こそが重要なのです。
失敗2:相場が下落して売却
10年積立を続けた後、相場が一時的に下落して「もう止めよう」と売却。その3ヶ月後、相場は回復…という悲劇をよく見かけます。
失敗3:生活費を削ってまで投資額を増やす
「月10万円は無理だけど、月15万円にしよう」と家計を逼迫させるのは論外です。継続不可能な額は、後で「やめたい病」につながります。
新NISAとドルコスト平均法の組み合わせ
2025年現在、最適な戦略は「新NISAでドルコスト平均法を実践する」ことです。
つみたて投資枠
- 年間120万円(月10万円)まで非課税
- 自動積立対応の金融機関が多い
- インデックスファンド中心
成長投資枠
- 年間240万円(月20万円)まで非課税
- 柔軟な投資が可能
- アクティブファンドなども対応
推奨戦略:
「月12万円をつみたて投資枠で積立」→「年144万円の非課税投資」
結論:「いくら積立すればいい?」への答え
正解は「無理なく10年以上継続できる額」です。
- 月1万円から始めて、3年後に月3万円に増額
- 昇進で給与が上がったら、その時点で積立額も増加
- 「毎月の手取りの10~20%」が目安
多く投資する人より、継続する人の方が資産が増えます。ドルコスト平均法の威力は、その継続性にあるのです。
よくある質問
Q. 毎月5万円、30年積立したら、いくら貯まりますか?
A. 年5%リターンを想定した場合、約4,000万円です。投資額は1,800万円(5万円×12ヶ月×30年)ですから、約2,200万円の運用益が生まれることになります。
Q. 途中で必要なお金が出てきた時は?
A. その時点で売却することは可能ですが、そのため「緊急資金」として3~6ヶ月分の生活費は普通預金に保有しておくことが重要です。
Q. ドルコスト平均法は本当に効果的ですか?
A. 相場が予測不可能な限り、非常に効果的です。市場平均に対して「市場予測」で勝つことは難しいですが、ドルコスト平均法なら「予測なしに」最適化された購入ができます。
ご相談ください
「自分にはいくらの積立が現実的か」「つみたてNISAと新NISAの使い分けは?」「相場が下がった時の心構えは?」といったご質問があればお気軽にご相談ください。
あなたの家計と人生設計に合わせた最適な積立計画についてアドバイスさせていただきます。
執筆者プロフィール
独立系ファイナンシャルプランナー / 不動産エージェント
福岡在住20年以上。中立的な立場から、不動産・保険・資産運用の相談を受け付けています。



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